人やネットの声に囚われると『奈落の羊』のように落ちていく。生配信の世界とは?

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人は周囲の声や言葉に囚われてしまい、まるで羊たちのように羊飼いに飼われて利用されることで不幸になってしまうことがある。たとえば世間体や怪しい宗教団体、闇社会だ。

この世間体を気にしすぎて自分の人生や家族・子供などの行動が抑制され、ときには利用されて苦しんでいる人は多くいるだろし、闇社会に巻き込まれて不幸になっていく。

またインターネット上での声に囚われてしまう不幸な出来事も最近よく起こっている。

炎上やバズ(ネットで注目される)によって起こる批判や誹謗中傷で傷ついてしまう人、注目を浴びることに囚われて中毒的にデマや炎上誘発を繰り返してしまう人。さらには、このような炎上もネット工作によって起こしている場合もある。

そんな今のインターネットや人の声に囚われてしまいどん底まで落ちていく「生配信」の世界の闇を描くことで、実はネット配信に警笛を鳴らしているのではないかと感じるマンガ『奈落の羊』を今回紹介する。

奈落の羊 第1~4巻/ きづきあきら+サトウナンキ

あらすじ

自堕落な生活を送る大学生・修二の唯一の趣味は【生配信】。
ネットで人気者になれば就職せずとも生きていけると信じる彼は、ある日、ネカフェ住まいの援交女性・メイと出会う。
彼女を【オモチャ】にして番組を作り、リスナーから金が集めようと考える修二。
メイを懐柔しゲスな番組で企画がうまくいく、と思われたそのとき…!?

リスナーの声に囚われたしゅーじ

主人公の修二は、コンビニスイーツ食べくらべとかぶらぶら歩いて実況とか、まったり系の生配信をする大学生だ。しかし以前はリクオという人物と組んでリスナーのたくさんいるネット配信の人気者だったようだ。

リクオは今のところ登場せずどのようなテーマで生配信していたのかはわからないが、しゅーじは過去の栄光にすがっている節がある。

そして彼はリスナーが飽きない「ネタ」をほしがっていた。「誰か電車に飛びこまねーかな」とか、人としてどんどん落ちていっているように見える。

そんなときにメイと出会って、彼女のブスでネカフェ難民援交女性をネタにドキュメンタリーを撮ることでリスナーからお金の援助も得ている。

「奈落の羊 1巻」 きづきあきら+サトウナンキ P62-63 (アクションコミックス)
「奈落の羊 1巻」 きづきあきら+サトウナンキ P62-63

正直言って、この描写は読んで気持ちのいいものではない。むしろかなり気分が悪くなってしまうほど心苦しい。

しかし、そのストーリーの流れがなぜか目を背けてはいけないような気がして、ネットで何かしら発信している人はいつこのように落ちてもおかしくないんじゃないのかと、気づいたらのめり込んで読んでいた。

しゅーじが完全に悪い人だとは感じなかった。彼は匿名で好き勝手なことをいうリスナーの声に囚われてしまって、心が徐々に歪んでいっているのではないかと思う。

レクシアのようなブロガーにも、このようなネットの暗黒面に落ちていると感じる人がいる。

特にバズや炎上を起こした後のブロガーは気をつけなければならない。なぜなら通常とは比べ物にならない何十何百倍ほどのサイトアクセスがあってかなり興奮するからだ。

そのあと暗黒面に落ちたブロガーは、また注目を浴びたいとデマ情報や人を煽り傷つけるようなコンテンツを発信して炎上を繰り返そうとする。まるでその姿は麻薬中毒者に見える。

このようにネット配信には恐ろしい面もあるので、リスナーやネットの声に囚われてしまうと奈落に落ちた羊のようにネット界に住む羊飼いに遊ばれるのかもしれない。

恩人の声に囚われたメイ

逆に、ネカフェ住まいの援交女性・メイは現実社会にかかわっている人の声に囚われているのではないだろうか。

しゅうじのリスナーからの質問で「家は?」「家出?」親とかどうしてんの?という問いかけに対してメイはこう答えた。

「パパとママは死んだ」

まだあまり明らかになってないが、メイはかなり重い過去を背負っているのだろう。コミュ障でブサイクという設定だが、両親との写真ではかわいい笑顔をしていて、実はものすごく美人だ。

そんな彼女は、絶望しているときに売春を教えた先輩と食べ物や寝床を与えてくれたしゅーじに多大なる恩を感じている。

売春を教えた先輩のユウキさんに公園トイレで身ぐるみはがされ、はだかで便器に頭突っ込まれても「恩人…いい人です」というメイ。

「奈落の羊 1巻」 きづきあきら+サトウナンキ P142 (アクションコミックス)
「奈落の羊 1巻」 きづきあきら+サトウナンキ P142

絶望しているときに救ってくれた人に恩を感じることは当然で、むしろいいことだ。

しかし、その恩人の声に囚われてなんでも言うことを聞く羊になってはいけない。その人がもし悪人であればケツの毛までむしり取られて利用される。

現実社会で密かに奈落の牧場をもつ羊飼いに都合のいいように飼われてしまうのだ。

ネット工作をする奈落の羊飼い

しゅーじとメイはそれぞれネットや人の声に囚われてどんどん奈落の底に落ちていく。

この二人は自業自得だと感じる読者もいるかもしれない。

しかし自分にはどうしてもそうは思えなかった。なぜならば、このマンガにはリスナーの声を誘導する羊飼いのようなネット工作するキャラも登場して描かれている。

「奈落の羊 1巻」 きづきあきら+サトウナンキ P152-153 (アクションコミックス)
「奈落の羊 1巻」 きづきあきら+サトウナンキ P152-153

このリスナーのコメントが実はウォッチャー同士で手を組み、誘導されていると気付く人はどれだけいようか。自分の場合はこのマンガ描写に違和感を覚えてなんとなくかな。

インターネットの世界では密かにネット工作が行われていることがある。これはつまり、世間一般の情報のように偽って、実は自分が仕掛けた情報であること。もしくは大衆の意見のようでいて、実は少数人たちが仕掛けた誹謗中傷コメントなどである。

最近の例でいえば、女性芸能人たちのブログが熊本大震災の件で大炎上したことだ。

しかもこの件は、少数の女性芸能人を嫌っている人がネット工作によって炎上させて多数の誹謗中傷コメントをつけていたようだ。

ネット社会でも現実社会でも奈落の羊飼いがいる。人やネットの声に囚われすぎると、しゅーじやメイのようにいつどん底の奈落に落ちてもおかしくない。

たとえしゅーじやメイのように奈落に落ちて羊みたいに飼われてしまっても、変わり向き合い自分を信じて救われる姿がいずれ描かれてほしいと願う、ネット「生配信」の闇世界を描いた反面教師的マンガです。

あとがき。

ネット上で何かしら発信している人はこのマンガを読んだほうがいい。

ブログやWebメディア、YouTubeなどの動画生配信でアクセス数を気にするメディア運営者は、インターネットの暗黒面に落ちないように反面教師として読むべき問題作!

ユウキさんの言っていた「底辺って…自分がどんだけ上にいると思ってんだか」という言葉が胸に突き刺さる、どん底に落ちるとはお金や生活が貧困していることだけではないということを、いつ奈落に落ちてもおかしくないことを「奈落の羊」というタイトルだけでなく内容からすごく感じ取れる。

あと、きづきあきら+サトウナンキ先生の代表作である「うそつきパラドクス」を想像してエロだけを求めて読むと後悔するかもしれません。

栖佑さんのおぱーいのときのように、うふふんとした気持ちで読むことなんかできない…笑

もちろんおぱーいは出てきますよ! だけどそんな興奮はおきませんよ。チーン…

それぐらいテーマ的にも重く苦しく考えさせられる作品です。

最後のあとがきで茶を濁すレクシアでした。

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レクシア
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