死にたいと思うことはそれなりの年齢を重ねていたら一度ぐらいはあるでしょう。
しかし、一か月以上日常的に「死にたい…」と考え・望み・死ぬ方法を模索する経験がある人はどれだけいるだろうか?
現在あなたがそのような状況にある場合、あなたの話を真剣に聞いてくれる人に相談して病院に行くことをおすすめする。きっとうつ病などの精神的な病気と診断されるだろうから。
精神的な心の病は人に理解されにくい。
それはある意味仕方のないことかもしれないが、そんなあなたは確実にものすごく大切なものを持っていたに違いない。正直な話、レクシアは大切な人を犠牲にしてまで叶えたかった夢をなくしたときに心の病を患った経験がある。
今回紹介するマンガは、そのような経験を持つ人の心の闇を深い奥底まで表現し、確実に心に響いて言葉に表すことのできない涙が流れてくる「大切な人をなくしてしまう永遠の愛」の物語を描いた作品を紹介する。
兎が二匹 全2巻 完結/ 山うた
あらすじ
自殺を繰り返しては甦る不老不死のすずと、彼女と寄り添い生きることを望む青年サク。お互いの想いが深まるほど、二人はすれ違っていく。
注目の新鋭作家が綴る、永遠の愛の物語。
短編版では語られなかった二人の出会い、そして秘められた過去が明かされる…
単行本カバー裏
死にたいときの心のイメージ
死にたいときというのは、なにか大切なものをなくした直後ではないと自分は思う。
仕事や恋愛などで失敗した直後は正直誰だって落ち込む。
しかし本当の問題はそのあとにある。
本当に心の病を患ってしまった人は、常にもしくは頻繁にその哀しい感情が頭をめぐっているのである。
想いが残る場所、物、人、匂い、音楽、時期、風景などの記憶によって幸せなもしくは辛い記憶が思い起こされ、それと同時に深い哀しみの感情が脳裏をかすめる。
このマンガ「兎が二匹」はそんないつ死のうとしてもおかしくない人の心のイメージを、深い深い闇の部分や心の底から発してしまう言葉を上手く表現している。
人によって記憶を思い起こすきっかけの出来事は違う。
それでも、このように夢や自分の頭の中で黒い手のようなものに招かれ、引っ張られる状況を脳裏に浮かべたことがあるだろう。この黒い手のようなものたちが足を引っ張って、ときには全く動くことができなくなってしまう。
また、そんな状況の自分を心配してくれたり、好意を寄せてくれる人がいる場合もある。
そんな重度の自暴自棄になっているとき、その相手に対してどう思っているかが描かれている。
すずのことを想い・共に生きたいと願うサクに対して、すずはこう話す。
ええ女見つけて結婚して子供こさえて仕事がんばって
楽しく長生きしてからええがに死にんさい
こがぁな化け物といるよりずーっとええよ!「兎が二匹 1巻」山うた P26
これは本当に心の底から相手のことをその人なりに想って出た言葉なのだ。 自分といたらあなたも自分のように不幸になると本気で思っている。
だからこそ、相手を突き放すようなことを言ってしまうのだ。
死のうとしてた自分を後悔するとき
死にたいと思っている自分自身を後悔するとき、それも因果なのか大切なものをなくしたときではないのかと感じることがある。
心の病を患っているときは自分の大切なものに鈍感だ。いや、むしろ大切だからこそ突き放すのである。
そうやってすずは、大切に想っているサクのことを限りなく生き返りにくいと考えられる方法で突き放した。
それでも死ぬことのできなかったすずは、生き返った後にサクの様子をこっそりうかがいに行く。
前向きポジティブマンであるサクはすずのことなんか忘れて幸せに暮らしているだろうと思っていた。しかし彼は、すずのことを想って後を追っていた。(自殺していたのである)
アイスコーヒーに足していくミルクのように、サクが話していた
「楽しい思い出足していけばいいんだよ!」
の言葉を思い出して、すずは泣く。
ここまでが第一話の内容で、これが泣かずに読むことができるだろうか?
それ以降の第二話では、すずとサクの出会いと共に過ごしてきた記憶の物語である。
新しい大切なものが絶望に効く薬なのかもしれない
土砂降りだった雨の中、すずが住んでいる家の前で倒れていたサクに出会った。
幼き自分と重ねたのか、すずはサクを家に招いて面倒を見ていた。
小さくても元気でいつも笑っているサクだけど、すずは薄々感じていた。そう、彼は自分が味わった悲しみを持っているのではないかと。
その直感は残念ながら当たってしまう。サクは親から愛情を与えてもらえず捨てられるのだ。
すずにはサクの気持ちがよくわかる。
だからこそ、サクを引き取って一人前に育てる覚悟を決めた。
このように新しく大切な人や想いができたとき、そんなときが「死にたい…」と思っている状況から立ち直る一番のきっかけで「絶望に効く薬」なのかもしれない、そう感じたのだった。
この後はふたりがともに暮らしていき、サクがすずを好きになっていく過程、そしてすずが不老不死であることを知って戸惑いを隠せないサクの姿やすずの深い闇の心や過去が描かれている。そこはぜひこのマンガを手に取って確認してほしい。
しかしながら、第二話以降は第一話の過去のお話であるため、サクが自殺してしまうということを覆すことはできないのだ。
この作品はものすごく悲痛であり、すずもサクもかなり重い苦悩を背負う孤独な家族であり恋人である。第2巻で完結予定のようであるが、すずの過去が明らかになりつつ大切なものをなくしてサクに自分を殺させるきっかけとなった出来事の記憶が描かれるだろう。
この作品のキャラ達の心の闇の原因であり唯一の光でもあるものは「大切な人」であると感じる。その大切な人をなくしてしまうことで孤独を感じて死ぬことを望み、また死のうとしたことをも後悔する。
このふたりの愛の続きをみたいと切実に願ってしまうレクシアである。
こんな人におすすめ!!
- 死にたいと孤独を感じているとき
- 心の病を患った経験がある
- 心の病を患った人が身近にいる
- 愛するもの「物・人・想い」がある
もし心の病を患っていると自分自身で気づいた場合は信頼している人に相談しましょう。
あなたの周囲の人が心の病を患っているときはその悩みを話してくれるように、無理に聞き出すのではなくゆっくりと相手の話を聞きましょう。
状況に応じて専門の病院の先生のところに行ければ、とりあえず一歩前進です。
人によってきっかけや原因は違うので、こうすればいいという確実な方法はない。なのでやはり心療内科や精神科の専門の先生に診てもらうのがいいと思います。
レクシアが立ち直るきっかけの絶望に効く薬は、やはりマンガだったのです。
大切な夢をなくして深い深い闇の中にいるとき、自分は嫌な記憶を考えたくないとマンガを読みまくってその世界に没頭しようとしていた。(もとから読みまくっていたが…)
そんなときにマンガの物語だけではなくそのマンガを描いている先生方の夢を追い続ける姿をイメージして考えるようになった。そしてマンガ家の先生方を応援するためのマンガ紹介サイト「HyperLexia(マンガ)」がレクシアにとって新しい大切なものとして生まれたのだった。
今ではこのサイトに自分自身がかなり救われている。
この作品を読んだあとはそんないろいろな記憶と感情が混じり、ボロボロ泣いていた。
マンガ家「山うた」先生の言葉
このマンガを描いている「山うた」先生から読者に向けてのコメントを頂きました!
@hyper_lexia 永遠を描くことで毎日の儚さを、死を描くことで生きることを、孤独を描くことで一人ではないことを、感じとってもらえる漫画になればいいなと思っています。よろしくお願いします!
— 山うた♦️兎が二匹1巻発売中 (@_yamauta_) 2016年3月6日
自分達が感じている当たり前の日常と反対のことを描くことで、その日常がいかに大切で幸せなものなのかを感じる作品だとレクシアも思います。そんな当たり前の大切なものを普段から大切にできるようにしたいですね。
山うた先生の他の作品・高校演劇と透明な女の子の話である「水の戯曲」もとてもおもしろいですよ。山うた先生のWEBサイトで読めますし、こちらの更新も楽しみです。
山うた先生、コメント付きマンガ紹介記事のご協力ありがとうございました。
完結予定の第2巻が待ち遠しくてたまりません!これからも山うた先生を応援しています。
「兎が二匹」特設サイト
山うた先生が運営する個人WEBサイトに「兎が二匹」特設サイトがあります。
すごく綺麗なイラストや他のWEBマンガがありますよ。
この作品は第一話の試し読みができますので、ぜひ読んでみてください。
完結第2巻発売中!
「兎が二匹」は単行本第2巻で完結しました。
笑いながら泣くサクの表情が気になりますが、読むとその意味を感じ取れるはず。
笑っているのに泣いているすず、泣いているのに笑っているサク、二人の笑顔と泣き顔は反対のようで同じ気持ち。胸を切り刻むあたたかな記憶が、死と生の意味を感じさせてくれる「兎が二匹」完結2巻。ふたりの愛はいつまでもつづく素敵なマンガです。 pic.twitter.com/NBeYloynpm
— レクシア (@hyper_lexia) 2016年5月13日
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