仕事や結婚は合理的にできても、恋だけは計画すらできない。『ルポルタージュ』の恋に落ちる瞬間

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今の時代、結婚するという普通のようなことが意外と難しいのではないだろうか。

ひと昔前は、世話好きな親戚の人や会社の上司などの紹介によって出会い、結婚することはよくあった。いわゆるお見合いというヤツがあったけど、お見合い結婚したという話を聞かなくなった。

現代は、恋愛ドラマなどの影響があったのか自然に恋愛して結婚するという価値観が一般的になり、恋愛へのプレッシャーが強くなっていると感じることがよくある。

なのに恋愛結婚した人が幸せだとは思えなくなる現実もある。そこで結婚を合理的にしたとき、恋という感情はどこにいくのか問いかけているマンガが『ルポルタージュ』だ。

ルポルタージュ 第1~2巻/売野機子

本作は、近未来の恋愛や結婚観を描いている。その時代では、独身男女の未恋率ーーーつまり、恋愛したことのない人が70%といわれ、結婚もWEBで手軽にマッチングするシステムが定着しつつある。

そこで、誰も恋愛にこだわらなくなったこの時代を象徴する非・恋愛コミューンというシェアハウスでテロ事件が起きた。このテロ犠牲者の人物ルポルタージュを、青枝聖(あおえ・ひじり)と絵野沢理茗(えのさわ・りめい)の記者が書き上げる、そんなあらすじだ。

現代は少子高齢化が深刻な問題になっているが、若者の生活に経済的な余裕もないので仕事が忙しく、恋愛する余裕もないという人は多いと思う。私もそのうちの独身男のひとり。

気になる女の子をデートに誘おうと思っても、ある程度のお金とマメな連絡をする時間がいる。しかしその両方に余裕がない。ましてや自分に自信もなくて出会いもない。恋愛なんて、できるわけないじゃない。

だからもう自分は、恋をしなくても生きていける。

そう思っていたのだ、このマンガを読む前までは。いや正確には、恋に落ちる瞬間を思い出したのだ。聖の泣く姿によって。

聖は警察管轄の記者だ。仕事に没頭していたクールな女性。記者の仕事は大変だと思う。そっとしてほしい遺族やその知り合いに事件のことを聞かなければならない。マンションピンポンしたり、相手が嫌がることを詮索したり、事件を求めるような人間にみえることもある。

あいつは、スリルが好きだって。

でもその姿は、仕事を合理的にしているだけなのだ。普通の、ちょっとしたことで感動したり動揺したりする姿は、仕事中は出来ないことがほとんどだったりする。仕事と恋の狭間で感情と行動がゆらぐ。

元の、感動したり動揺したりする普通の自分に戻ると仕事が出来なくなるかもしれないという聖。『ルポルタージュ』1巻

事件を求めるような人間じゃないよと泣く聖。『ルポルタージュ』1巻

『ルポルタージュ』1巻 売野機子

聖とその相手・國村葉(くにむら・よう)は互いに一目惚れしていた。それは吊り橋効果だったかもしれない。その感情を隠していたけど、相手に誤解されたくなかったとき、涙が、気持ちが、溢れてしまう。

そんな泣き顔を見た相手の男は、恋に落ちずにいられるだろうか。なぜ私が、女性の泣き顔に惚れるのかわかった。いや、このマンガによって思い出した瞬間だ。

恋に落ちる瞬間の描写がもの凄く魅力的な本作だけど、人や社会の恋愛や結婚における価値観のゆらぎも面白い。

フタを開けてみれば、良しとされる恋愛結婚をしたはずの夫婦の離婚率・価値観の違いによる不仲・DV(家庭内暴力など)・セックスレス…などなど、友人の実体験を聞いてうんざりする。

だったら恋愛を“飛ばし”て結婚したほうがいいんじゃないかって、仕事のように計画的に結婚したほうがいいんじゃないかって、読んで感じたりもする。

恋愛するのはちょっと面倒だけど、子供が欲しいという私がいる。子供を育てると大切なことを学ぶことがたくさんあるし、他人の子供でもかわいいのに自分の子供だとなおのこと愛おしいだろう。そう思う人は、“飛ばし”結婚が魅力的にもみえるだろう。結婚生活は互いに努力することができれば、合理的に幸せな人生を歩めるよう計画することができる。

感情と価値観が矛盾しているけど、こんなふうに恋愛や結婚観がゆらぎ、自分に問いかけずにはいられない。

第1巻を読んで今思うのが、仕事や結婚はまだ合理的に進めることができたとしても、恋だけはどうしても計画すら立てられないもの、ということ。

本作はきっと、現代の恋愛や結婚観にひとつの解答例を掲示される作品ではないと思う。そして、恋という感情を自分の人生のなかでどこにおくのかを問いかけてくるだろう。感情と価値観が矛盾する。

それがこのマンガの最大の魅力だと私は思う。

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レクシア
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