夢を叶えたいと思っている人は多いでしょう。
プロスポーツ選手やアイドルや成功している実業家、もしくは政治家になって国を変えたいなどの華やかで大きな夢もあれば、会社で出世することや結婚して幸せな家庭を築きたいなどの普遍的だけど意外と難しくて小さくみえる夢もある。
このような自分の叶えたい夢を叶えようとする意志が野心というものなのだけれど、大なり小なりの野心を実現させるにはリスクを犯さなければならない。人生の選択とはギャンブルのようなもので、自分で決断することがなにより大切なのだと教わるマンガ『賭ケグルイ』の最新刊5巻をレビューします。
賭ケグルイ 第5巻/ 原作:河本ほむら 作画:尚村透
第5巻のあらすじ
この女に、引き摺り込まれる。際限のないギャンブルの深淵に。
夢子とユメミの戦いが終わった。傍観者として、二人の戦いを安全圏から眺めていた皇 伊月(すめらぎいつき)。しかし観客席の彼女も、夢子の狂気により当事者となる。対峙するのは尊敬するかつての先輩…。そして生徒会長・桃喰 綺羅莉(ももばみきらり)がついに夢子と邂逅を果たす―― 美少女たちの学園賭博譚、女心と意地を賭ける第5巻。
己の価値を決めるのは貴方です
ギャンブルによる階級制度が存在する私立百花王学園に転校してきた黒髪の美少女・蛇喰夢子。“勝てば天国、負ければ地獄”を体現する学園と生徒会の方針により上納金を納められない敗者は“家畜”になってしまい、イカサマや騙し合いのあるギャンブルにかなりの緊張感が張り詰める。しかし、主人公の夢子は捨て身のギャンブルを自ら行い、リスクを負うことに喜びを覚える姿はまさしく賭け狂い。
夢子や他の生徒達のお金やすべてを賭けて挑む緊張感と、勝利や絶望による狂気の表情が見どころのギャンブルの世界を描いたマンガ『賭ケグルイ』ですが、第5巻では次期生徒会長を目指す役員の豆生田と夢子がギャンブルをすることに。そして観客席から眺めていた皇も、夢子の狂気により当事者となる。
強い野心を持つ豆生田と皇は、お互いに親近感を抱く先輩後輩の関係だった。そのふたりのやり取りに夢子が口出す。「己の価値を決めるのは皇さん自身ですよ」と。
夢子の話す、「野心を実現させるためにはリスクを犯さなくてはならない」ということと決断するのは自分自身であることは、我々の日常生活においてもすごく大切なことである。
プロスポーツ選手になりたいのであれば、むしろそのスポーツが自分にとっての青春といえるぐらい練習しなければ叶えられないだろう。アイドルになりたければ、恋愛も禁止になるかもしれないし歌やダンスの稽古や多くのオーディションを受けファンサービスもしなくてはならない。会社で出世するにも成果を出さなければならないし、上司に媚びを売らなければ出世できないときもあるだろう。幸せな家庭を築くにも自分磨きだけでなく、自分で結婚相手を見極めて決めなければならない。しかも相手や状況によっては幸せな家庭が破綻する場合もあるだろう。
大きなことにも小さなことにもそれぞれリスクがある。
リスクを受け入れて自分で決めなければ、自分の野心や望みは叶えられない。そして己の望みと価値を決めるのは貴方自身なのです。
人生とはまさにギャンブル!
夢子の言葉を聞いて、皇は「どうする!?」とものすごく葛藤する。それは当然だ。
豆生田に付けば生徒会役員に戻れるかもしれない。それに対して、夢子に付けば勝てればいいが負ければ確実に破滅するからだ。そして見返してやると賭け狂う決断をした。
しかしおもしろいのはここからなのだ。
「選択ポーカー」という役を競い合うはずのギャンブルが、いつのまにかお金の積み合いになっているのである。しかし資金力で皇が豆生田に勝てるはずもない。
一度のポーカーに30億と圧倒的な額を賭けられて顔面蒼白になる皇に対して夢子はこう話す。
「でも大丈夫 まだまだ賭けるものはありますよ」
文字通り人生のすべてを賭けることになる。具体的には、皇の実家であるトイメーカーの時価総額は数千億に及び彼女の父親は代表取締役であり大株主。一人娘としてその相続権を持っているので、100億程度のレイズとしてディーラーが認めたのである。
つまり皇が負けたときは、死ぬまで家畜、果てるまで搾り取られる人生を送ることになる。
「選択ポーカー」という一度のギャンブルに30億や人生を賭けるなんてどう考えてもあり得ない狂気沙汰で、しょせんマンガのなかだけの話かもしれない。
しかし“リスクを取らないことがリスクだ”というような著名人や実業家の言葉を聞いたことある人もいるだろう。このマンガで伝えたいことは同じようなことかもしれない。
人生とはまさにギャンブルのようなもので、特に夢や野心を実現させたいと本気で思っているのならば、リスクを犯さなければならない。そしてその決断は、周りの人でなく自分自身が決めなければならないのである。
もちろん失敗して破滅してしまうかもしれない。野心がより困難なことであれば成功することの方が難しいだろう。しかしギャンブルのように、賭けなければ勝って大金を得ることも野心を成し遂げることもできない。
そのリスクを取るために、まずは自分自身で決断することから始めよう。ギャンブルでなくていい、自分の人生なのだから自分の進む道を自分で決めるのだ。夢も野心も、大きなことも小さなことも。
豆生田と皇の、いや夢子も含める人生を賭けたギャンブルの行く末は、ぜひ最新刊5巻を直接読んでもらいたい。夢や野心を実現させるためのリスクとして、人生というギャンブルに勝つために、まずはこの『賭ケグルイ』を購入して読んでみてはどうだろうか。
あとがき。
このマンガの魅力は、まず日常ではありえないようなギャンブルの世界の狂気の沙汰“賭け狂う”姿に読者も緊張感を張り詰めてしまう描写、かつイカサマや騙し合いのあるギャンブルによる相手の心理状態からの駆け引きや推理ものとしても楽しめるマンガでしょう。
ほほを赤らめてウットリした表情の夢子が、なぜか身震いしてしまうような狂気のドS顔であることも魅力的です。
しかし、マンガにのめり込んで作品の意図を感じて考えることで、自分の今までの考えや行動を省みるきっかけにもなるのです。『賭ケグルイ』の第5巻を最後まで読むと、出資者(パトロン)は勝負師にお金を出すだけの傍観者でもないことがわかるでしょう。
投資家など、FXまたは株など個人で投資をする人も読んでみるといいかもしれませんね。
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