『修羅の刻 第16巻』昼行燈な山田さん(不破現)のようなやさしい嘘つきになりたい

武道・格闘系のおすすめマンガとして外せない作品といえば「修羅の門」でしょう。

この作品は一度長期休載していましたが「修羅の門 第弐門」として連載再開し、2015年7月の最近に完結しています。

レクシアは「修羅の門 第弐門」に登場する昼行燈なおっさんキャラ・山田さん(不破現)が大好きなのですが、「陸奥圓明流外伝 修羅の刻」に山田さんが主役の物語・昭和編として連載されている!?

このときはすごく嬉しくて連載している月刊少年マガジンを読んでたし、もちろん「陸奥圓明流外伝 修羅の刻」の第16巻も購入して過去作から読み直しました。

 

そこで今回は、「陸奥圓明流外伝 修羅の刻」最新刊16巻の新刊レビュー記事です。

 

陸奥圓明流外伝 修羅の刻 巻之十六/ 川原正敏

陸奥圓明流外伝 修羅の刻について

「修羅の門」の主人公・陸奥九十九の先祖である代々の陸奥圓明流の使い手達が史上に名高い猛者と闘い、影に隠れながらも日本の歴史を動かして来た様を描く連作シリーズ。

歴史上の人物に実は陸奥が…関わっている

というテーマを元に描かれた歴史系格闘マンガであり、宮本武蔵編・風雲幕末編・アメリカ西部編・寛永御前試合編・源義経編・織田信長編・西郷四郎編・雷電爲右衞門編・そして今回の昭和編で構成されている。

今回紹介する「陸奥圓明流外伝 修羅の刻 巻之十六」の昭和編は実に十年ぶりの連載再開となり、今までの「陸奥圓明流外伝 修羅の刻」とは違って歴史上の人物が絡んでいない。

 

第16巻 不破現の章 昭和編 (ネタバレ)

実在の日本史の人物に陸奥圓明流が関わっている姿ではなく、本編「修羅の門」の前史を描いているものが昭和編。

「修羅の門 第弐門」に登場する昼行燈なおっさんキャラ・山田さん(不破現)と「修羅の門」の主人公・陸奥九十九と闘ったケンシン・マエダ、陸奥九十九の母・陸奥静流が中心人物である。その物語はただの格闘マンガではなく、三人が若かりし頃の青春譜がそこにある。

「陸奥圓明流外伝 修羅の刻 巻之十六」では【不破現の章 昭和編】の物語であるため、以前の巻や「修羅の門」を読んだことがない人でも楽しめる始まりの巻だと思います。

もちろん、この作品をもっと楽しんで読みたい、内容をもっと理解したい人は「陸奥圓明流外伝 修羅の刻」の1~15巻や本編「修羅の門」も読むといいでしょう。

 

不破と前田光世の子孫が出会う

今までの説明では、不破と言われてもなんのことかわかりませんよね?

簡単に説明すると、

千年に亘り不敗を誇るとされる架空の古武術・陸奥圓明流の分家であるものが不破圓明流。
織田信長編のときに関わった陸奥の双子の子供が分裂している。(詳しくは「陸奥圓明流外伝 修羅の刻」の第11~13巻を読んでみて!)

 

最強を目指し「時代の影に生きた」と称される陸奥に対し、不破の一族は暗殺等によって糧を得てきたことから「時代の闇に生きた」と作中で語られています。その先代不破圓明流継承者の息子で、当代継承者の弟が主人公の不破現(ウッちゃん)なのです。

それに対し、グレイシー一族に柔術を伝えたとされる歴史上の人物が前田光世で、その養子だった前田三郎の息子がケンシン・マエダという設定。

 

彼らが出会うことから物語は始まります。

「修羅の刻 16巻」 川原正敏 P77 (講談社コミックス)
「修羅の刻 16巻」 川原正敏 P77

ケンシン・マエダは鬼の眼をしたいかにも強いとわかる殺気の籠った青年で、ウッちゃんは逆に底や気が見えないひょうきんでおちゃらけている青年。

ケンシン・マエダが陸奥を超えるために会いに行くというので、ウッちゃんが陸奥のいるところまで案内するという経緯で物語は展開していきます。

 

ボク達の日常でいえば、ケンシン・マエダはカリスマ性やオーラのある凄腕実業家みたいな感じの人で、ウッちゃんはお笑い芸人のように一般人や子供に馴染みやすい感じの人という印象を受けます。

さあ、あなたはどちらのような人になりたい・もしくは好きですか?

 

陸奥の女は馬鹿が好き

この物語のヒロイン・陸奥静流。彼女は陸奥圓明流継承者の娘で、すごく元気で前向き。

陸奥の男は、というかなにかを極めようとする者は、限りなく大馬鹿者です。
今までの「修羅の刻」でも陸奥の男は大馬鹿者というように描かれていました。

さて、そんな大馬鹿者に育てられた娘というのはどんな男性を好きになるでしょうか?

「修羅の刻 16巻」 川原正敏 P137 (講談社コミックス)
「修羅の刻 16巻」 川原正敏 P137

もちろん、逆に普通な人がいいという女性もいると思います。

ですが女の子は父親のような人を好きになるというように、静流も父親のような馬鹿が好きなのです。

 

彼女の母が亡くなって、正式な陸奥である父は母の実家に亡骸を返しに行った。今陸奥はここにいないと分かったケンシン・マエダとウッちゃんは、陸奥を待つために静流の家に寝泊まりすることになります。

ケンシン・マエダとウッちゃんは馬鹿な匂いがするらしい。笑

 

やさしいだけの嘘つき

静流は陸奥を名乗れるほど強くはありません。

身体は山を駆けたり猪を捕ったり働いていたので自然と力はつきますが、技は稽古しないと身になりません。そこでケンシン・マエダと静流は稽古します。

静流はケンシン・マエダに「陸奥を超える事ができません」と煽ることで稽古する。
ケンシン・マエダは静流を舐めている…でも舐めているのは静流も同じ

どちらもかなり強い。しかし、静流の心臓に欠陥があることが発覚して稽古は中断。

 

彼女がいつも笑っているのは、無理して笑っているのは、そんな自分の弱さを認めたくないからではないでしょうか。 静流は女で…その上できそこないだから「陸奥」になれないだろうと実は弱気なのです。

ケンシン・マエダは鬼の眼をもった本当に強い者。彼が鬼の眼になるぐらい彼女も強く、静流も鬼の笑みをしている。

「修羅の刻 16巻」 川原正敏 P188-189 (講談社コミックス)
「修羅の刻 16巻」 川原正敏 P188-189

そのようにウッちゃんは静流に話し、彼女は泣きました。

 

この場面で、なぜレクシアは山田さん(ウッちゃん)が好きなのかわかった気がします。
彼は「修羅の門 第弐門」もそうだが実は変わらずやさしい。そして嘘つきでもある。

ケンシン・マエダとウッちゃんはどちらも大馬鹿者である。

そしてレクシア自身も周りになんと言われようとなにかを求める(極めようとする)大馬鹿者。それでも自分は「できそこない」なのです。

 

世間の意志も親の想いも知ってるつもりだけど 心がそれに応えない

 

ボクは、不破現のようになりたいと憧れているのだ…

ケンシン・マエダや陸奥九十九のように世間とは外れた大馬鹿者が大好きで、静流のように強いけど弱さを秘めた人に惹かれる。そして彼らのような人の手助けがしたいのです。

 

あとがき。

物語の展開について書きましたが、このマンガは格闘シーンが見どころですよ。

ウッちゃんとケンシン・マエダの出会いがしらに柏木流の使い手と闘うところやケンシン・マエダと静流の内に鬼を秘めた稽古など。キレッキレな動きと流れるように繰り出される技、卑怯な手にも屈せずに躱して相手を投げるところなど、物凄い迫力があります。

そんな迫力のある格闘シーンは、実際にマンガを買って読んでみてくださいね。

 

この「陸奥圓明流外伝 修羅の刻 巻之十六」がきっかけで、川原正敏先生が描く武道・格闘系マンガ「修羅の門」に興味持っていただけるといいかと。

このマンガはすべて集めようと思ったらとても巻数が多いのです。よって、お試しのような感覚で読んでみるといいと思いますし、この【不破現の章 昭和編】だけでも楽しめる作品だと思います。

 

この作品を読み直して、今の自分と少し重ねてしまいました。

ケンシン・マエダや陸奥九十九のような人がボクにとってのマンガ家先生で、彼らのように自分はなれないできそこないだと思っている。だからこそ、ウッちゃんのように彼らをそっと手助けするものがマンガ紹介サイト「HyperLexia(マンガ)」で、ほんの少しでもそうなりたいのだと思っています。

彼らのようなおもしろいマンガを描く天才に自分の手助けなどいらないのかもしれない。

それでも山田さんが陸奥九十九にするように、すこしでもなにかをしたいのです。

 

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