「何故人は死ぬ?」
「何故人は生きる?」
「何故正義は存在する?」
これら人類の哲学的で本質をあらわすような問いに、あなたはなんて答えるのだろう。
人それぞれの答えがあると思う。正解なんてないのかもしれない。しかしあなたの答えは、はたして自分の心の底から納得して生まれた答えなのだろうか。
誰かに言われたから、脅されたから、洗脳されたからと、知らず知らずのうちに納得したふりをしていないだろうか。
僕の心の底に溺れていた濁流のような人間の本質的な問いを『ぼくらのQ』は溢れさせてくるマンガだ。
『ぼくらのQ』全4巻 市真時系/裏少年サンデー
どうして僕は生きているのだろうと心に抱えていた井口正奈(いぐち・しょうな)のもとに、出題テーマ【生命のQ】と言って謎の球体がついてくるようになった。それは周囲の人に見えないし、触れず、コミュニケーションもできない。
この謎の球体は「何故人は進化する?」などと質問してきて、それに正解すると出題テーマに応じた能力を報酬として与えてくれる。
正奈につきそう【生命のQ】以外にも、連続殺人鬼の十彈一靜(とだん・いっせい)の【死のQ】、十彈に屈服させられた捜査一課の刑事である星龍院茉莉花(せいりゅういん・まつりか)の【正義のQ】など、これからも謎の球体は登場してきそうだ。
この主人公の正奈には、車いすに乗った幼なじみの佑香がいる。臆病者だった自分をかばってけがした過去から罪悪感を抱いているのか、死にたがりで無茶をするようになっていた。生きるのが恥ずかしかったんだ、と。
しかし、謎の球体や十彈と茉莉花に生きる意味への執着や殺意と信念を突きつけられることで、自問自答せざるを得なくなる。これがかなり痛々しく、読んでいるこちらまで自分に問いかけずにはいられない。
「何故人殺しは悪い?」
法律で決まっているからと答えても、それは正解ではない。法律が無かったら殺人を含めた犯罪が許されるわけではないし、戦争で人を殺すのが正義だった時代もある。むしろ現在も日本を含めて殺人は数多く起きている。
幼なじみの人生をくるわせてしまった自分を許せない正奈は、信念どころか自分自身の生き方すらも本当は心の底から納得していないと気づくのだ。
ほんとは正奈だけでなく、読んでいる僕自身もわかっていたのかもしれない。自分が間違っていることも歪んでいることも、綺麗事を言っていることも。
誰かのために生きることが美徳とされる社会で、誰かのために生きる自己犠牲とは、実は自己満足なんじゃないだろうか、と。
このマンガを読むまえからうっすらそう考えたことが僕にはある。努力して夢を掴もうとしていたのに他人にくるわされたとき、逆に自分が人を傷つけたと自覚したとき。自己嫌悪の濁流に溺れそうで、自分自身を傷つけたこともある。
死や生命、正義ってほんとなんなんだろう。
僕の信念は自分から生まれたものだろうか。
親や友達などの誰かに言われたから、会社や上司に脅されたから、社会や世間に洗脳されてしまったから、で生まれた信念の皮をかぶった執着心なのかもしれない。そんな思いが自分の過去の記憶とともに駆け巡ってくる。
最終的に正奈はどんな正解を答えるのだろうかと自分を重ねながら気になっているのだけど、もしかすると正解なんて答えられない気もする。
ただ、実はあやふやだった自分の信念を問い、正面から向き合って見つけるための一歩として、このマンガを読むことをおすすめしたい。
コミック情報!
裏サンデー連載作品なので『マンガワン』にて最新話も含めて全話無料で読むことができます。ちょい足しイラストなどもありますので、気になるひとはまずアプリで読んでみるといいかも。
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