新海誠監督のアニメーション映画のファンとして、去年の12月からずっと心待ちにしていた最新作『君の名は。』を観てきました。
本作は「まだ会ったことのない君を、探しているー」がキャッチコピーのアニメーションの新領域。これまでの過去作とは一線を画しているようにもみえますが、その本質は同じようでいて集大成にも感じました。新たな”不朽の名作”が誕生した!!と断言できる。
その映画直前にもコミカライズ(マンガ版)が発売していて、もちろんぼくはマンガ版をあらかじめ読んで映画を観に行っていました。発売されているマンガ『君の名は。』第1巻の内容的には映画の予告までの内容で作品に忠実に描かれているので、最初の予想とは全く違う場所まで連れていかれることになるはず。つまり映画をまだ観てない人が先にマンガを読んでいてもまったく問題なく楽しめると思います。
今回は、コミカライズ(マンガ版)の紹介しつつ映画『君の名は。』の感想記事です。
*映画の核心的な内容のネタバレは避けるように記事を書いています。
『君の名は。』 全3巻/ 原作 新海誠、漫画 琴音らんまる
千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。家系の神社の古き風習や父の選挙運動。小さく狭い町で、クラスメイトなど周囲の目が余計に気になって嫌気し、都会への憧れを強くするばかり。
「来世は東京のイケメン男子にしてくださーい!!!」と叫んだりもするぐらい、うっぷんがたまっている三葉。
そんなある日、見覚えのない部屋で目覚めた。見知らぬ友人、目の前に広がる東京の街並みに戸惑いながらも、念願だった都会での生活を満喫している。もう一方で、東京で暮らす男子高校生・瀧も、奇妙な夢を見た。夢にしてはリアルな感じだなって、意外とかたい…と胸を揉みつつ、気づいたら山奥の町で女子高校生になっているのだ。
けっこうコメディ色があって、コミカルに描かれる日常のような非日常が始まりの印象。
不思議な夢は繰り返され、その間の時間が明らかに抜け落ちていて、意味不明な非日常についメモを残していたことから二人は気付くことになる。
「君の名は。 1巻」 新海誠、琴音らんまる P112-113
いく度も入れ替わる身体とその生活に戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止める瀧と三葉のふたりは、自分たちの生活を崩さないようにメモを通す取り決めをして、時にケンカし、時に相手の人生を楽しみながらも状況を乗り切っていく。
この“入れ替わり”はたぶん、平安時代の「とりかへばや物語」をモチーフにしているのだろう。男女の“入れ替わり”の場合はお互いの体を取り戻そうとすることが目的で物語が展開していくことが多い。しかしこの作品では、“入れ替わり”という非日常な生活になじんできた頃になぜか急に入れ替わりが途切れてしまう。このマンガ第1巻では入れ替わりが途切れたところで終わります。
このような非日常な生活をしていくと徐々に入れ替わっている相手のことが気になっていくのは必然で、入れ替わった先での記憶がたとえ徐々に失われようと、写真展で「あっ どこかでー…」って瀧はぼーっとしたりする。あこがれのバイト先美女・ミキ先輩とデートなのに。
ちなみに、ミキ先輩は完全にぼくのタイプ。笑
三葉の体で体験した、おばあちゃんと話した深―い言葉「ムスビ」の時間の流れそのものの意味や口噛み酒とか彗星とかは意味深で、キーポイントかもしれません。
このふたりは直接あったことなんてないけれど、なんでか気になってしまう恋心のようでいてそれだけで終わらない恋のお話です。
また、新海誠監督のアニメーション映画は精密な風景描写がまるで実写のように美しすぎることで有名ですが、琴音らんまる先生のマンガによる描写も負けず劣らずの美しさ。映画のキャラクターデザインやイメージを損なうことなく読みやすく描かれています。
新海誠監督の過去作のコミカライズ版では、サイドストーリーや映画では描かれなかったわかりにくい場面の補足が描かれていて、そこが見どころでもあるでしょう。
小野小町の和歌「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」をもうひとつのモチーフにしている本作品。「あの人のことを思って眠りについたから夢に出てきたのだろうか。夢と知っていたなら目を覚まさなかっただろうに」と訳される、想いを寄せている相手への恋心を詠った和歌。そのような繊細な恋心だけでは終わらなかった映画は、よりあつまって形を作り捻じれて絡まって時には戻って途切れまたつながり、そして突き刺さるふたりの距離が予想とは全く違う場所まで連れていかれる衝撃的な展開でした。
琴音らんまる先生の解釈から織りなす糸を編んでつくられる組紐(君の名は。)が今後どのように描かれていくのか、まだ読めないマンガ第1巻の続きを、楽しみにしている。
あとがき。
本作品は、これまでの新海誠監督による過去作とは一線を画しているようにもみえます。しかしその本質は同じようでいて集大成にも感じました。
RADWIMPSによる楽曲が映画のシーンを席巻し、そして過去作で表現されていた糸たちがまるで織りなされた組紐のように、入れ替わり、すれ違い、いろいろな距離を乗り越え、積み重なることで完成した集大成なのは間違いないでしょう!!
新海誠作品の文脈で追って見ると、また違った見方ができるはず。『ほしのこえ』と『雲のむこう、約束の場所』と『星を追う子ども』と『言の葉の庭』が邂逅して脳内を駆け巡り、さらには『秒速5センチメートル』のモヤモヤする答えを導き出しているかのようにぼくは感じています。
きっと、新海誠ファンはさらに楽しめる!間違いなく不朽の名作。
やっぱりぼくは、新海誠監督の作品が大好きです。
実はこの映画はもう二回ほど劇場で観ました。たぶんもう一回は観に行くでしょう。笑
映画自体がなりの大ヒットスタートを飾ったみたいで嬉しく、そして琴音らんまる先生にはプレッシャーも大きくなったかもしれませんが、まだ読めないマンガの続きを、本当に心から楽しみにしています。
最終巻3巻発売中!
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新海誠作品のコミカライズ版(マンガ)まとめ記事はこちら。
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