血がつながってない家族と、あなたはいっしょに暮らせますか?
結婚していっしょに暮らしたいと望んだわけでもなく、仲の良い友達とルームシェアするわけでもなく、血がつながってない人とお互いが望んだわけじゃないのにいっしょに暮らす、そんな環境になってしまった人はいるでしょう。
いろんな理由とフクザツな事情があるだろうけど、よくある例が、家族を亡くしてしまったとき。
今回紹介するマンガは、両親は昔死んでいて、結婚した兄が死んだことで兄の嫁と暮らすことになった義姉妹のお話です。
『兄の嫁と暮らしています。』 1~6巻 くずしろ/ヤングガンガン
家族が交通事故や病気などによって急に亡くなってしまうと、かなしい。
だけど、残された者たちは生きなければならない。ずっと悲しみに暮れるわけにもいかない。血のつながりがなかったとしても、亡くした人と深い関係の人同士がいっしょに暮らすことがある。
このマンガでは、女子高生の志乃の両親はだいぶ昔に死んでいて、唯一の家族だった兄が結婚してから、半年前に死んだ。未成年なので兄の嫁といっしょに暮らしている。つまり相手はお義姉さん。
女子高生の志乃は勉強嫌いで優等生というわけではないけれど、自分の事は頑張って自分でやろうとするし、友達もいて学校の事も一生懸命で、捨て猫もほっとけずに拾ってくるような、ふつうのいい子だ。そして兄の嫁の希は小学校の先生でほんわかしてちょっと天然だけれども、毎日おいしいごはんも作ってくれて、趣味や勉強にも付き合ってくれるし、わがままも聞いてくれるような、やさしくてかわいい人。
パッと見、ふたりはうまく暮らしている。
志乃は希のことを少しも悪く思っていなくて、むしろむちゃくちゃ親切にしてくれる彼女にとても感謝している。なんだか自然と兄のことを惚気てしまう希のことをたまにからかいながらも、お金のこととか彼女の未来とかをやっぱり気にしてしまう。
それに対して希は、もっと志乃と仲良くなりたい。この子を一人になんかできないし、お金のことも気にせずにもっと頼ってほしくて、いろいろと悩みながら側にいて面倒をみている。だけどそれを建前に、心の底でずっと志乃の向こうにいる兄・大志くんの面影を追っている。
生活はうまくやれていても、お互いに気を使いすぎていてなんだか物足りない。親切にしようとしすぎて、友達にも家族にもなりきれずにみえない壁のある義姉妹な関係のまま。
たぶん、血がつながっていない家族はいい人同士であればあるほど、こじれるのかもしれない。人が安らげるような関係性とは友達でも恋人でも家族でも、お互いに心を開いているときなのだ。
相手に気を使い優しくするだけではだめなのだろう。ときには怒ってケンカし合ったり、哀しみや苦しみの気持ちを共有しあったり、強い感情をぶつけて踏み込んでからこそ仲が深まるもの。きっと仲良くなりたいとお互いが意識しすぎるほど時間がかかるのかもしれません。
大切な人を亡くした者の人間関係はうまくいっているようでいても、しこりが残るのは必然かもしれない。安心できる家族にはまだまだなれないし、もしかしたらいっしょに暮らしている関係はなくなるかもしれない。
それでもやはり、みえない壁ができたままのこじれた義姉妹ではなく、本当の姉妹のようになってほしいと思っている。大切な人を亡くしているふたりには、幸せになってほしいと願わずにいられない。
こんな人におすすめ!!
- 血がつながっていない家族と暮らしている
- 幸せな家族になりたいのに、なんだかフクザツ
- 相手に気を使いすぎて、うまく仲良くなれない人
- 大切な人をなくした哀しみを抱えている
少し重たいようなレビューになってしまったけど、ふだんはけっこう明るい感じな日常マンガ。志乃も希も本当にかわいくて、表情もコロコロ変わって、明るくて楽しそうでいいふたり。だけど、ふとしたときにみせる繊細で暗い感情がナチュラルでリアルなんですよね。
普段はとても元気で明るいけど実は哀しみも抱えているなんてひとは、すごく共感するはず。
志乃も希も絶対にモテる!かわいくてやさしくてすごくいい人だもん。
お願いだから、ふたりとも幸せになってくれ。そしてぼくといっしょに暮らしてくれ。笑
最新刊6巻発売中!
特設サイト限定の読み切り・描き下ろしマンガが公開されています。こちらもぜひチェックを。
コメント