先日、箏を題材にした青春部活マンガ「この音とまれ!」を紹介しました。
そこで今回の記事では、最新刊第10巻の新刊レビューをしようと思います。
この音とまれ! 第10巻/ アミュー(ジャンプスクエア)
このマンガの紹介記事はこちら。
第9巻までのあらすじ
他校のライバル達に刺激を受け、夏合宿で絆を深めた時瀬高校箏曲部の仲間たちであるが、夏の大会でチカの怪我などのトラブルがあり、いい演奏はしたものの結果を残すことができなかった。
全国大会の予選は冬の12月にあり、そして本選の全国大会はその翌年の夏に開催される。よって、今のメンバーで全国大会に行くには次の冬の大会が最後のチャンスである。
そこで時瀬高校箏曲部は全国の予選大会の曲を、さとわが破門されるきっかけとなったオリジナル楽曲をアレンジした「天泣」に決めた。
技術の底上げのため、箏曲部の指導を任された鳳月会の堂島晶だが、無償での指導ということもあり、何か裏があるのではと勘繰る部員達…。
だが彼女の実力は本物で、さとわが破門される原因となった大会で一位を取る程のもの。 しかし彼女は、その大会でさとわの演奏を聴いて以来、心に深い闇を抱えている。
10巻の内容(ネタバレ)
まずはじめに言っておきます。
この10巻のメインキャラクターは堂島晶(10巻の表紙の女の子)で、この巻では彼女が主役といってもいいぐらいの内容になっています。
巻のはじめでは、堂島晶が兄のいる家に帰ってシスコンの兄が登場します。
しかし、晶は兄に冷たく
「あなたはもう箏を捨てた人間です」
と冷たくあしらいます。
そして話は箏曲部の方になりますが、以前滝波先生に言われたさとわを演奏に専念させるという言葉をチカは気にしており、さとわに自分の練習をしろと言いますが、
「私 みんなに教えるの 負担だったことなんてないから!!」
と、さとわが言って手本を見せます。
武蔵の提案で基本練習を天泣に活かすように工夫して練習し、そこから堂島さんの指導が入ります。
それぞれみんなにストップをかけて指導しますが、チカを飲み込みが物凄く早いと評価する半面、足立実康(サネ)には典型的な努力型だけれどかわいそうなくらい平凡と評価します。
さとわには指導しませんが、堂島さんとさとわで話し合います。 さとわが無償で指導を引き受けた理由について尋ねますが、
「あなたが全てを投げ捨て 周りをめちゃくちゃにしてまで手に入れたものが どんなものか」
と、堂島さんは言いました。
ここから堂島晶の過去のお話になります。
晶の兄は幼いころから箏の天才で、かたっぱしからコンクールに出て全部一位を取ります。
しかし、幼いころから妹の晶が好きで、かなりのシスコンです。笑
そんな晶も兄に憧れて少しずつ箏が上達していきますが、上手くなって見えてきたものは兄の真の凄さと才能でした。
しかし、両親が事故で亡くなって兄は箏をやめてしまい、堂島の実家の椿会を妹に託しました。 晶は椿会を継ぐことになり、筝曲会で注目度の高いコンクールで一位を取るために「水の変態」という曲を二年間かけて練習します。
その積み重ねた努力の末、納得のいく唄と演奏をして見事一位は取れるのですが、そこで当時中学生のさとわが失格になった「八重衣」*を圧倒的で絶対的な才能で弾きます。
*追記 コメントにて指摘がありましたが、中学時代のさとわがコンクールで弾いた楽曲は古典曲「八重衣」ではなくオリジナル楽曲(のちの「天泣」)です。痛々しくも圧倒的な才能で弾きましたが、コンクールにエントリーしていた「八重衣」ではない曲を演奏したのでさとわは失格になっています。追記によって訂正させていただきます。
その演奏を晶は聴いて、絶対的な才能の差に落胆して泣きわめきます。
「っ何よ失格って… 何よ!!」
「あんな演奏しておいてふざけないでよ ばかにしないで!!」と。
「-光が 待っていると思ってた でもそこにあったのは より深い 出口の見えない闇だった」
レクシアは思わず感情移入して涙がポロリ…
それから話は時瀬高校箏曲部にもどり、さとわとみんなで堂島さんのコンクールで一位を取った「水の変態」の曲を聴きました。
素晴らしい演奏だったとさとわは堂島さんに伝えて、今までの無礼を謝りますが、晶は惨めな気持ちになり、箏曲部の指導をやめようと滝波先生に伝える。
後任が見つかるまでと、晶は部室に指導に行きますが、部室に今までとは違う一音の響きに気付きます。 そこで武蔵に堂島先生の曲を聴いてみんな練習に励んだことを伝えられ、パート分けして練習の指導を始める。
さとわとチカ、そしてサネの三人のセット練習を指導しますが、サネが足をひっぱっていて晶はこの子にとってすごくキツい状態かもしれないと心配します。
何度も失敗しますが、サネが
「出来るまでやっていいっすか!」
と言った言葉を晶は聞いて、兄の言葉を思い出します。
「何回も失敗して ちょっとケガもしたけど」
その三人の姿を見て、晶は涙を流していました。
最新刊10巻の内容はこれで終わりです。
第10巻 まとめと感想
この最新刊10巻は、堂島晶の過去と兄やさとわとの才能の差を感じてできた晶の心にある深い闇のお話です。 しかしこの晶のおかげで、時瀬高校箏曲部の部員は着実に技術や実力をつけることができました。
晶は物凄い努力家で、コンクールで一位を取るだけの実力はもっている。 その実力を持っているからこそ見える、天才兄やさとわとの才能の差。
その天才の兄が箏をやめること、さとわが才能を持ちながらコンクールを度外視した演奏をすることに対しての深い怒りとコンプレックスを感じている。
だからこそ、平凡なサネを心配し、出来るまで何度もやる姿に晶は感動?ではなく、自分と重ねて思わず涙が出た、という解釈をレクシアはしています。
ありますよね、そんなコンプレックスをもってしまうことって。
スポーツでも仕事でも上達すればするほど…
この10巻にはかなり感情移入して、読み終わった後は放心状態…でした。
あと、9巻で出てきたサブキャラを10巻で丸々使うとは思いませんでしたよ、ホントに。
晶は最初は嫌なキャラに見えましたが、本当は箏に対して真摯でひたむきに向き合い、物凄い努力の人であること、とても繊細でがんばる女の子であることがわかりましたね。
晶にはこのまま時瀬高校箏曲部の指導を続けていてほしいものです。
次の11巻が待ち遠しいですね。
マンガ家「アミュー」先生の言葉
このマンガを描いている「アミュー」先生から読者に向けてのコメントを頂きました!
@hyper_lexia 読者さんに向けてですか…!(・_・;そうですね… この音は箏曲部の話ではありますが、基本中心に描いているのはいつも人間ドラマです。なのでお箏難しそうだなーとっつきにくいなーと思う方にも、とりあえず1度読んで頂けたら嬉しいです(*^^*)
— アミュー (@amuse8) 2016, 1月 6
ホントその通り!マンガの内容はそれぞれのキャラ達の過去や苦悩、それを乗り越えるための努力と友情を描いた人間ドラマですね。
レクシアはこの第10巻で堂島晶が大好きになりました!!
アミュー先生、これからも応援していますので頑張ってください。
コメント
どうも初めまして。
寺野サウルスと申します。
つい先日「この音とまれ!」を全巻読みまして、「どっかで感想書いてるサイトないかなー」とネットサーフィンをしていたら、こちらのサイトに行きつきました。
この音とまれ! 面白いですよね。
主人公側もそうですけど、ライバルキャラも丁寧に描写されているのがいいですね。
絵も綺麗ですし。
晶さんは僕も好きですね。
最初出てきたときは「うぉ! 悪役キタコレ!」と思ったものです。
(ちなみに一番好きなセリフはさとわ土下座シーンの「こんなみっともない格好、見てられないもの」です。セリフが微妙に違うかもしれませんが、そこはご容赦を^^)
十巻の晶さん切ないですね。号泣シーンは僕も泣きそうになりました。
そのシーンもそうですが、一番堪えたのは「っていうか一位の人って、どんな曲弾いてたっけ?」ですね。
数年間の努力が一瞬でフイになってしまった晶さん、心境を思いやるとつらいですね。
短いコメントですが、これくらいで失礼いたします。
また、僕も漫画の書評ブログをしていますので、もしよろしければ遊びに来てください。
まだメールフォームもないしょぼいブログですが、これから発展させていくつもりです^^
では本日はこれくらいで失礼いたします。お互い頑張っていきましょう^^
寺野サウルスさん、コメントありがとうございます。
晶さんが登場したときは「美少女の悪役がキタ!」と自分も感じていましたが、今連載中のジャンプスクエアでは特に時瀬高校箏曲部を助けるキャラになっています。
このようにサブキャラも丁寧に描写されているのはとてもいいですし、成長して変化していく人間ドラマ的な内容のマンガがボクは好きです。
寺野サウルスさんのブログも拝見させていただきました。
お互い漫画家の背中を後押しできるよう頑張りましょう!
はじめまして。この音とまれ!の感想について検索していたら
こちらに辿りつきました。リンと申します。
感想を拝読して、同じ気持ちになったのでコメントさせてください。
自分も演奏経験があるので、晶の慟哭シーンは共感して涙が出ました。
今はもう全国大会予選の話で晶が部員の指導や鳳月会での立ち回りで
正義感があって努力家な人だと分かっていますが、初登場はこんな風に
関わってくるとは想像できなかったので、感慨深いですよね。
私も晶は登場した時から気になっていたので、最近は前向きになってくれて
とても嬉しいです。
ところで一つ指摘させてください。
さとわが鳳月会を破門される原因となった失格演奏の曲は「八重衣」ではなく、
その時はまだ名前もなかったさとわが作ったオリジナル曲(のちの「天泣」)です。
「八重衣」とは地歌・箏曲の曲名で元々ある古典曲のことです。
さとわが失格になったのはコンクールにエントリーしていた「八重衣」ではなく、
エントリーされていた以外の曲を弾いたからです。
さとわが弾いた曲とは父親が亡くなって母親の笑顔が見たいという気持ちで
作成した自分のオリジナル曲で、その頃の初心を母親に思い出して欲しくて
誰にも演奏を止められないコンクールの土壇場で弾いたわけです。
ですので、そもそも「八重衣」のアレンジではないです。
滝浪先生とチカが「八重衣」と映像メディアに記載されているのを見て
さとわの弾いた曲は「八重衣」という名前の曲だと勘違いしただけだと思います。
折角素敵な感想なのに勿体ないと思い、僭越ながら指摘させていただきました。
リンさん、コメントありがとうございます。
この記事では当時第10巻を読んだ直後の気持ちで書いていますが、今では晶さんも前向きになっただけでなく、時瀬高校筝曲部と鳳月会を引っ張る存在になってくれて嬉しく感じます。本当に感慨深いですよね。
間違った記載をしていたことについては、アミュー先生や今まで読んでくれた読者に申し訳なく思っています。追記という形で訂正させていただきました。
リンさんのご指摘のおかげで気づくことができましたので、本当にありがとうございました。
こんばんは。リンです。
返信と訂正追記部分、拝読しました。
こちらこそ、ぶしつけなコメントだったかなぁと思っていたので
誠実で真摯に対応して下さってありがとうございました。感謝です。
9/3発売の本誌で「この音とまれ!」の最新話を読んでから感動で泣いてしまって、
他の読者と共感したいあまりに感想を検索していたのですが、
「この音とまれ! 晶」で一番上に出てきたので、興味を持ってお邪魔したのが
きっかけです。私も10巻は大好きなので、そうそう!なんて共感して拝読しました。
「この音とまれ!」は人の嫌な部分も丁寧に表現しているところが好きです。
登場人物が挫折したり、もがいたり、打ちのめされても、前に進もうとする
ひたむきさに心を打たれて、応援したくなっちゃうんですよね。
そんな彼らが報われる場面を見ると涙なしでは読めないです。
そして自分も頑張ろう!と活力をもらえたり。
もし宜しければ、今後も「この音とまれ!」の感想を拝読したいです。
ありがとうございました。
リンさん、再びコメントありがとうございます。
自分も本誌で最新話読みました。
もう涙なしには読めないですよね!!さとわちゃんの今までの苦しみや哀しみなどの記憶の邂逅が頭を駆け巡り、そして筝曲部での努力がきっと報われるときが来るのだ!と、まださとわしか弾いていないのに、どうしようもなく感傷に浸っていました。
ひとの弱くて悪い部分と、かかわる人々によって苦しくても変わっていく姿、そしてモブキャラなんて言わせないみんなの成長に、自分も活力をもらっています。次の13巻はものすごく熱い巻になること必須なので、また「この音とまれ!」の記事も書きたいと思っています。とにかく発売が待ち遠しいマンガですね。
自分の書いた文章に共感してくれることはすごく嬉しくて有難い。たとえ批判的な内容であろうと、しっかり読んでくれた上でのコメントには真摯に対応していく所存です。
これからも当サイトをよろしくお願いします。素敵なコメントありがとうございました。