異なる生物が相手でも、愛って生まれるのでしょうか?
ぼくたち“人間”は忘れがちだけど、もちろん他の生物と共存関係にある。この地球で生きている限り他の生物とともに生きているし、ペットなど愛玩動物として飼育することが異種生物と深くかかわる一番の機会かもしれない。
ペットとして生物とかかわることで、その犬や猫や金魚などに愛情を抱くことはもちろんあるだろう。けどそれは対等な関係ではなく共依存でもない気がする。今回紹介するマンガは、そこからさらに踏み込んだ、異種生物でお互いが“食料”という共依存関係での純愛物語です。
飴菓子 全4巻/ 群青
オオカミ少年と飴菓子の純愛は苦しくて美しい
物語の主人公である少年・糸巻は人間とオオカミの混血な種族だ。いや、オオカミ族の中でも、より濃い血を継ぐ “古狼”である。この種族の男は、何も食べ物を受け付けない“飢餓期”に入ってしまうと飢えを満たせなくなるので、古狼の谷に生息する自分だけの“飴菓子”を見つけて育て、一年後に彼女を食べなければならない。
少女の姿をした果肉を持つ植物の“飴菓子”は、古狼の血を飲むことで成長する。体内の毒が消える完熟期を迎えるとその体を古狼に捧げることが生きる目的だ。彼女らはみな可愛い、というかものすごく美しい。だけど、古狼以外の生物にとっては触れるだけで死に至るほどの猛毒なのです。
糸巻も飢餓期に入ることで古狼の谷に放り出される。そして出会った自分だけの飴菓子に話を聞いてさらに苦しむことになる。
コーヒーが飲めるようになって、お母さんのリンゴのパイが大好きで、自分はふつうの人間のつもりだったのに、なんでこんなことに…と苦しんでいる。食べても吐き出すのにお腹がすき、あまいニオイのする飴菓子もまだ毒があって食べられない、他の古狼も襲ってきてイライラする。だから飴菓子に血を吸わせる。そんな関係に特別な感情が生まれるのは無理もないのかもしれない。
これからさらに異種生物間の共依存な関係が描かれている。人間同士の恋愛でもある共依存というものに近いかもしれない。けどこれは、飴菓子の姿だけでなく残酷なまでも苦しくて、美しく、そして愛おしい。
これが10年前、糸巻が初めて“飴菓子”と出会った時の話。本当の物語は第3話からだ。
オオカミも飴菓子も関係ない!? きっと愛は生まれる
壮絶な純愛の末、飴菓子を食べた糸巻。運命の出会いであり、そして運命の別れともいえる。
糸巻はどれだけかなしくつらい思いをしただろうか。ここから物語は10年経過する。
飴菓子は人間の手によって町の“庭園”で人工培養されるようになっていたのだ。詳しいことは実際にマンガを読んでもらいたいのだが、飴菓子の美貌を商品にしたり、毒の研究や利用したり、人間の欲とお金儲けに利用される飴菓子。そこで糸巻は売られそうになっていた天然の飴菓子を助けることになる。
先ほどの飴菓子と古狼の共依存はたしかに苦しくて、美しく、そして愛おしい。だけどここで出会った糸巻と天然の飴菓子は共依存の関係には当てはまらない。糸巻にとって自分だけの飴菓子ではないからだ。そしてできそこないの飴菓子でもある。
そんな運命でも共依存でもない関係のふたり。たとえ異種生物でも、きっと愛は生まれるんじゃないだろうか、と第2巻の最後を読んでぼくは思った。生物間の共存や友情なのかもしれない、まだこの時点では愛じゃないのかもしれない、それでもオオカミじゃなくて飴菓子じゃなくて、ただの糸巻とみどりをこれからも見守りたいと思っている。
こんな人におすすめ!!
- オオカミ少年や精霊が可愛い、女の子はきっと好き
- 美しい純愛物語が好き、けどそれは苦しいよ笑
- 美貌だけが魅力じゃない!傷も美しいのだ
- 共依存のような苦しい恋をしていた
このマンガは女性向けの作品なのでしょうが、苦しくてつらかったけど美化しているような恋愛経験を持つ男性にはかなり響き、突き刺さるはず。糸巻の後悔の気持ちと周りがどうでもよくなる感情に見覚えがあった。そう、ぼくが。
恋愛における共依存というものは厄介であり、美化してしまうものなので、そんな恋物語をファンタジーとして美しくきれいに描いている。しかしこのマンガは、純愛でもなく共依存でもなく、恋の苦しみから立ち直るための愛の物語になるんじゃないのかと期待している。
そして人間以外の生物が好きなぼくは、異種生物間でも愛は生まれると信じている。
完結4巻発売中!
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