初恋は見逃したドラマのようにあっけなく終わる!?『たとえとどかぬ糸だとしても』の変わってしまう恋心

人も気持ちも変わっていく。変えようとあがいたって簡単にはいかないくせに、変わってしまうときはあっけない。

恋心はずっと同じ人を想い続けたとしても変わっていく。
だけどはじめての初恋はとくに、なかなか一歩が踏み出せない。

悩んで悩んで気持ちを整理しようとしたとしても、いざとなると行動できない、諦めきれない。それなのに気持ちが変わるときは一瞬で、今までの気持ちがあっけなく終わったときにどうするか、それが恋の行方を決める。

そんな一人の相手への恋心も変わりゆくことを描いているマンガが『たとえとどかぬ糸だとしても』だ。

たとえとどかぬ糸だとしても 第1~4巻/tMnR

兄の怜一くんが結婚しました。相手は幼馴染の薫瑠さん。
近所に住んでいた彼女はわたしにとってもまた幼馴染のおねーさんで昔から大好きな人でした。ただ、幼かったころのわたしはその感情が恋だとはしらず…いや、いつから恋になっていたのか気づくことのないまま二人が結ばれるのを見守り、ようやく自覚したのは結婚式の時。
その日から、伝えることすら叶わなくなった手遅れの片想いがはじまったのです。

そんな、百合というだけにとどまらず禁断の片想いをする女子高生のウタちゃん。

彼女は兄夫婦と同居しつつも自分の恋心を押し殺し、最初から希望がないことはわかりきっていて想いを募らせるだけの心を切り離した恋をしていた。

はじめから報われないと分かり切っている恋なんて、普通諦めつきやすいし自然といつしか気持ちが薄れていくものと思ってしまうだろう。自分のことをなんも特徴のない普通な人間だと思っている人は特に。

そこで普通な女子高生の自分があたりまえなウタちゃんに、経験豊富な相談相手ができる。二股三股あたりまえで、学校でも体の相性が良い人か確かめようとするような恋夏は、ウタちゃんとは全く正反対の恋愛観な女の子だけど、二人には共通することがある。

報われない相手への想いが強いこと。

禁断の恋ほど燃える、とよくいうが、その実態はかなり残酷で苦しいものだ。だってウタちゃんも薫瑠さんも兄やその周りの人も、みんな相手のことを思いやる優しくて善良な人たちだから。その悪意のない優しさと暖かさで傷ついてしまう切なさやこわさの繊細な描写に引き込まれずにはいられない。

しかし本作第1巻の最大の魅力は、薫瑠さんに対するウタちゃんの変わってしまう恋心だ。

幼いころから大好きだったけど、あのころのままただ好きでいられたら、前を向いてまっすぐ想いを伝えられるのに。今のわたしはハグだけでなくそれ以上のことも求めてしまう。
珍しく浮かれたり自分で恥ずかしくなるような夢をみたり、この恋に意味が欲しかったから、つい…という行動を取ってしまって、

「わたしの初恋は見逃したドラマの最終回のようにあっけなく終わった」

という涙を流して、第1巻が終わるのだ。

恋心を変えようとあがいているときには簡単にいかないくせに、変わってしまうときは本当にあっけない。人も気持ちも変わっていく、それがたとえ同じ人への想いとしても。同じ人を同じ想いのまま想い続けることはできない。それが叶わない想いであろうと、結婚して想いを叶えたとしても。

ウタちゃんは薫瑠さんに対して、薫瑠さんは怜一くんに対して、一途でも変わってしまう恋心が終わったときにどうするのだろうか、恋の行方が気になってたまらない。

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