私たちの人生は疲労とヨゴレとの戦いである。
上司の嫌味、数日に続く残業、ストレス。
道中、様々な方法でストレス発散と疲労回復の工夫を凝らすが、疲労がピークに達すると私はこう思う。
あぁ温泉に浸かりたい。そしてできるなら、温泉あがったあと『エルフ湯つからば』を読みながらゴロゴロしたい——と。
『エルフ湯つからば』1巻 西義之/モーニング・ツー
異世界の冒険には強い武器や心強い仲間も必要だが、傷ついた体や心を癒やすことも重要。冒険者を癒やすにはポーションや宿、魔法などの選択肢があるが、疲弊した彼らの心を癒やすのはそうかんたんではない。
—エルフ湯を例外として—
出現率 0.002%、一度浸かると身も心も満たされ人生も一変するという伝説のエルフ湯番頭エルフの「ユフ」が冒険者や村人を癒やす、異世界移動風呂冒険物語だ。
エルフ湯における入湯とはすなわち神秘の儀式。
魔法の結界で安心のひととき、湯船は大きくないが1分浸かれば体力全快5分浸かれば夢の世界、体の状態を瞬時に見極めそれに合った薬草で湯の効能を決める。
冒険者やモンスターに怯える村人はいつもいろんなことを我慢している、焦っているもの。
もうトシ、歳、限界だよとささやく心の呪い。エリート家系や家訓に縛られた世間体。なにもできない自分にイライラして伝わらぬ気持ち。男ハ男、女ハ女、と能力に見合わぬつまらぬこだわり。
そんな呪いから解き放ってくれるのが幻のエルフ湯なのだ。
異世界冒険者や村人の疲労と汚れは、私たちの現実とさほど変わらない。上司の嫌味、数日に続く残業、ストレス。それを癒やすもののひとつが温泉なんだと私は思う。
そしてなによりも、番頭エルフ「ユフ」の可愛さが最高だ。
見透かすようなクールな瞳、ハチマキに長い耳、たすきがけがかっこよくてお洋服かっこかわいい。そして癒され感謝の言葉を伝えるとすこし照れるそのすがた。美しくて可愛いくてたまらない。
生物は皆生まれついて、魂と身体の他にすでに持っているものがある。生きとし生けるものすべてが生まれもったもの、それはおのれがどう生くるか決める「自由」ぞ。とユフは言う。
異世界の冒険者も社会の労働者も、モンスターや権力者の呪いにかけられていることがあるけれど、私はユフの言う通りだと思っている。がしかし、冒険や人生を歩んでいけばどうしても他人から、そして自分自身でも呪いをかけられることは避けられない。
そんなときに温泉でも自宅の風呂にて薬効のあるものを添加して湯に浸かれば、自分の本来の心を解き放ち癒されるはずだ。そして素直な気持ちで『エルフ湯つかれば』などのマンガを読むひとときが、私にとっての至福なのだ。
ちなみに私は、別府にある真っ白で独特の匂いを放つ明礬温泉が好きだと言っておく。
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