天才とは、ひらめきと見栄でできている!?『ユキトスミ』天才書道家・雪乃の本当の姿は僕しか知らない

テレビに出ているような注目の若者は凄い。天才だ。

もちろん注目されているということは、なにかの事柄において素晴らしき結果を出し、評価されているということである。

しかし、立ち振る舞いや姿勢は箱の中の映像によって美化されているだけかもしれない。いや、注目を集めるほどのひらめきを持つ天才だからこそ、見栄によってイメージを保とうと必死なのかもしれない。

『ユキトスミ』の雪乃のように。

ユキトスミ 第1巻/おにお

天才書道家の橘雪乃。現在、最も注目されている芸術家であり、その整った容姿と知的で上品な雰囲気から今や学園のマドンナだ。

彼女の隣の席に座る中村太郎。中村くんは普通っていうか、面白みがないというか、没個性の男の子で、同じクラスの天野さんが気になってる。だから、別に雪乃のことはすごいと思うけど無関心だった。

学園のマドンナは勉強もできず運動音痴でナメクジのようなポンコツ。雪乃は才女で学園マドンナの地位を守らなければならない。そこで、中村くんだけは幻想を抱いてはいないのを見込まれて?か、雪乃に書道部員に任命される。

そんな天才書道家でありマドンナの裏表を描いた学園コメディだ。

 

雪乃は普段猫かぶってていつもすまし顔だけど、中村くんに対してだけはわがまま強引で欲深く自意識過剰、そして憎たらしい。

しかし彼女が書道に向き合ったとき、どこまでも晴れやかで楽しげで踊ってるように大筆を振るう姿は圧巻で、目が離せなくなり心を動かされる。心まろやかになちゃいますよね~!!と吹き出す雪乃はほんと憎たらしいけど…

その書に対する姿勢がいつも実直そのものというわけではない、のもリアル。普段とは比べものにならないほどの大胆で規格外な動きはカッコいい。

なぜ雪乃は、中村くんにだけは素をさらけ出しているのか。それは、雪乃と中村くんは「対等」な協力者だからだ。

天才といえど、やること全てが素晴らしいわけではない。失敗することはあたりまえのようにあるわけで、1%のひらめきが見る者を魅了し、注目を集める。けど、まわりの人々は美化しすぎているからこそ、本人は99%の見栄で完璧な天才を演じようとする

才能を開花させ続けている人には、中村くんのような「対等」な協力者がいて、心だけでなく身の回りの世話やイメージ対策など支えになっているはずだ。

 

中村くんには、これからもぜひ天才書道家マドンナの雪乃を支えてほしいと思う。もちろん信頼関係を築いたあとに、天野さんといい感じになって雪乃がスランプになる展開も面白そうだけど。

本当に天才かどうかはスランプになってからこそ試されるのだよ、雪乃ちゃん。

 

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